こんにちは、カラス君です
私自身将棋では「嬉野流」という戦法を好んで指すのですが、昔ならいざしらず、今は知っている方もかなり多いのではないでしょうか?
そんな嬉野流を指すにあたって実際に読んでみて参考になった本をいくつか紹介していきたいと思います
目次
参考書籍.1:「奇襲研究所(嬉野流編)」
ではさっそく紹介していきましょう。まずこれを紹介しなくては話にならないというほどの嬉野流使いにとってもバイブル、著:天野 貴元さんの「奇襲研究所(嬉野流編)」です
アマ強豪の嬉野さんが開発した戦法に著者の元奨励員である天野さんが目を付け、独自に研究をして本にまとめられました。(著者の天野さんは2015年10月に若くして癌により亡くなられており、こちらの本が最後の著作となられました。)
嬉野流とは?
嬉野流の解説をざっくりいたしますと、最初に左の銀を先手なら6八に、後手なら4二銀と上がり、そこから力戦に持ち込むのが主な狙いになります。力戦好き、奇襲好き、定跡を覚えるのが苦手な人には魅力的な戦法ではないでしょうか
こちらの本が出版された当時は初手の銀上がりからの三手目角引きが主流でしたが、20現在は発案者の嬉野さんが「新嬉野流」といった新しい差し回しをしており、そちらでは場合によっては角引きを保留する場合もあります
本書は初手の銀上がりから3手目に引き角にして戦う事を主軸とし、そこからの変化を多岐にわたって紹介しています。前半の大部分は対居飛車の解説、後半に対振り飛車の解説が入っています
嬉野流の魅力
個人的にこの戦法の良さは
1.筋違い角を拒否できる
2.定跡外で攻めるので、対策を知らない人、時間の少ない将棋において勝ちやすい
3.基本は居飛車だが、相手の対応によっては振り飛車もできる
4.相手のどんな戦法にもある程度は対応ができる
以上の4点だと考えています。特に1.が私にとっては大きかったです。振り飛車党の方なら誰でも筋違い角で頭を悩ませた経験はありませんか? 正直私はかなり困らされました
しかし、普通の居飛車は定跡が多くて面倒に感じてしまう・・・そんな時にこの嬉野流の本に出会いました。私の持っているこの本は読みすぎてもうボロボロになってきています;
筋違い角に困っている方、少し変わった戦法が好きな方には是非おすすめしたい一冊です
参考書籍.2:屋敷流2枚銀戦法
次に、屋敷流二枚銀戦法を紹介していきます
嬉野流は初手6八銀からの総合戦法のことを指しますが、そこからの変化で互いに居飛車で局面が進んだ場合、
1.相手が棒銀でくる場合
2.相手が矢倉に組んでくる場合
など、相手によって対応がわかれます。具体的には1.なら左銀を対棒銀用に防御に使いますし、2.なら斜め棒銀orカニカニ銀などで攻めていくのが主流かと思います。
1.に関しては天野さん著の「奇襲研究所(嬉野流編)」の中で、「飛車先交換型、飛車先不交換型」の棒銀をかなり詳しく解説してくださっているので、そちらをご一読いただければと思います。
2.に関しても「奇襲研究所」の中に記載はありますが、実はそれよりも似た変化をかなり深く掘り下げてくれている本があります。それが 著:屋敷伸之先生の「屋敷流二枚銀戦法」になります。
~本書で学べる事~
相手が矢倉に組んできた場合、嬉野流側は基本的に斜め棒銀を見せていくことになります。すると、相手側は素直に矢倉の駒組みだけ続けていると簡単に陣形が崩壊してしまうので、角を6四に設置して斜め棒銀を牽制にきます。
この角を6四に設置する手筋は居飛車対振り飛車での振り飛車側などでよく見かけます。意味合いとしては飛車のコビンを睨むことにより、右桂馬を使い辛くしたり、斜め棒銀を牽制するといったものになります。実際対策知らないとかなり厄介です
それに対抗して出てくるのがカニカニ銀模様の駒組みで、屋敷先生の本ではこのカニカニ銀からの変化を丁寧に説明してくださっています。もちろん「奇襲研究所」の方でもカニカニ銀の変化は扱っていますが、そちらの方ではカバーしきれていない細かい部分をこちらの本で研究する事ができます。
~本書の手筋の威力~
本書の対矢倉の手筋の威力は凄まじく、こちらを読むだけでも対応の幅がぐんと広がるばかりでなく、相手の矢倉の駒組次第では一気に技をかける事が可能です。中でも私が一番役に立ったと感じたのは、角銀総交換後の変化でした
嬉野流を使っていると、矢倉に組んでくる相手に対して角銀総交換の変化になることが多いのです。その局面からどう攻めるかが非常に重要で、そこの手筋を抑えるだけでもぐんと勝率がアップすると実感しています。本書はそんな嬉野流使いの方々の力強いバックアップになってくれるでしょう
参考書籍.3:飯島流相掛かり引き角戦法
次は「飯島流相掛かり引き角戦法」を紹介したいと思います
本書は将棋世界2015年10月号の付録で付いてくる小冊子的なものとなっております。ただこちらの内容は、「屋敷流二枚銀戦法」や「奇襲研究所」ともまた違っており、棒銀の受け方や攻め方も前者の2冊とは違った新しいパターンを紹介してくれます
~飯島流引き角戦法の出だしからの変化~
飯島流相掛かり引き角戦法では、相手に途中で居飛車に戻されても大丈夫なよう、最初の駒組は慎重に行っていきます
よく初級者の方がやりがちな事に、飯島流引き角や鳥刺しを覚えたあと、相手の作戦が振り飛車とわかる前に振り飛車と決めつけた駒組みをしてしまうというのがあります。こうした後に相手に居飛車で来られると悲惨です。この時点で作戦負けとなってしまいます
本書は陽動居飛車?ではないですが、飯島流引き角の駒組をこちらがしている時に相手が普通で居飛車で来たらどうするの?という「飯島流引き角戦法」の補足的な説明が主です。
また、本書では角道を開けずに引き角にして居飛車へ対抗するので、嬉野流使いの方から見ても参考になる内容となっています
飯島流引き角使いの方はもちろんですが、嬉野流使いの方々も読んでみて損はない内容ですね
参考書籍.4:将棋・究極の勝ち方 入玉の極意
次に紹介するのは著:杉本昌隆さんの「将棋・究極の勝ち方 入玉の極意」です。内容がとてもわかりやすい杉本先生の本になります。
~入玉の解説書?~
タイトルからしていきなり度肝を抜かれると思います。入玉将棋になるのは数十局指して1回あるかないかくらいですよね
ですが、「ほら、駒を投資しないと入玉するぞ!」みたいな感じの差し回しで入玉をちらつかせるのは、上級者になるにつれて必要なテクニックになるかと思います
~嬉野流に必要な感覚~
そしてなにより、嬉野流を指す上でもこちらは非常に参考になると私は考えます。理由としては
「嬉野流のような薄い陣形で速攻を目指す戦型では、相手の攻撃を素直に受けるのではなく、逸らす感覚が必要。」と非常に感じるからです
ちなみにこの逸らす感覚に関しては「奇襲研究所」著者の天野さんや、嬉野流考案者の嬉野さんも同様の事をおっしゃっています。
※上記の逸らす感覚について発言をしている嬉野さんのインタビュー記事があるので、参考に載せておきます。
https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=71315
さて、本の内容の話に戻りますが、入玉を扱った書籍との事だけあって、入玉戦の考え方から手筋まで幅広く解説してあります
自身の入玉はもちろんですが、相手の入玉を阻止する手筋や考え方も勉強できるのが非常にgood。もちろん最後には次の1手集もあります
「入玉されて悔しい負け方をした」とか「あと一歩で入玉できそうだったのに、ミスをして捕まってしまった」という経験は誰もがするはず。(経験していないのであれば、後に絶対経験します。)本書はそんな局面での力強いアシストをしてくれるはずです
参考書籍.5:力戦次の一手205
さて、次に紹介するのは次の一手集ですが、ただの一手集ではありません
嬉野流では中盤からの力戦が腕の見せ所。初手の左銀上がりからの力戦を目指す総合戦法なので、中終盤におけるねじりあいの強さを磨けば磨くほど、嬉野流での差し回しの切れが増してきます
そんな力戦を鍛えてくれるのが本書になります
~超実戦的次の一手集~
本書では創作問題が一切なく、すべて著者の実戦からの次の一手となります。また局面の選択として序盤ではなく、中、終盤の局面を選択してくれています
つまりは非常に実戦的、かつ手の広い複雑な局面において、「一体どの手を指すのが正解か?」と考える力を養ってくれます
そして問題数の多さにも注目です。なんと205問もあります。創作問題は一切なしの実戦からの205問なので、そこも力戦を鍛えるという意味では非常に価値が高いです
文庫本サイズで持ちやすいのに加えてボリュームたっぷりなのがうれしい点です
次の一手本でよくあるのは、序盤での次の一手とか、特定戦型での定跡を学ぶ為の次の一手、実戦で著者はこう指したといった次の一手なので、中終盤の実戦における「盤上この一手」といわれるような次の一手本は、実はなかなかに貴重です
まとめ
以上5つを紹介させていただきました。嬉野流というのは最終的に力戦に持ち込むのが狙いになるのですが、その狙いに持ち込むまでの定跡はあるならばおさえておきたいですし、力戦になったあとの力強さもほしいところです。
その力を総合的に高められるのが上記で紹介した5冊かなと私は感じてます。嬉野流の切れ味を上げたいのであれば是非読んで研究してみましょう